郄山文彦著『地獄の季節 「酒鬼薔薇聖斗」がいた場所』新潮社/新潮文庫/平成13年/ISBN:4101304319

藤沢周「解説」

親本は平成10年〔1998年〕2月同社刊。『新潮45』1997年〔平成9年〕8月号〜11月号までに連載した「ドキュメント『地獄の季節』」に加筆修正を行ったもの。
郄山文彦は大阪府堺市で1998年1月に起きた通り魔事件容疑者(犯行当時19歳)の実名を『新潮45』で発表したルポで公表したことから訴訟を起こされていたりするものだから、露悪的なライターだと思って食わず嫌いだったのだけど、この本はなかなか読ませる佳作で、大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞するだけの実力がある人なんだと認識を改めました。
事件の関係者を可能な限りあたり、酒鬼薔薇聖斗の両親・祖父母の出身地まで丹念に取材する手法は確かにノンフィクションとしては優れてる。ただこの手法は個人のプライバシーを無用に詮索し作品に盛り込むことも必要なわけで、それがこの作品の説得力を増す根拠にもなってはいるのだけど、確かにこんな調子でやっていたら、そりゃ訴えられてもおかしくないわな。