鈴木邦男著『言論の不自由?!』筑摩書房/ちくま文庫/2000年9月/ISBN:4480035850
言論の不自由?! (ちくま文庫)

文庫版まえがき
序章 なぜ、話し合いができないのか
第一章 テロで天皇が守れるのか
第二章 挑発する左翼、突っ込む右翼……
第三章 天皇制を廃止して、その後はどうする?
第四章 天皇論争もフェアーに、さわやかに
第五章 そして、国旗・国歌は法制化されたが……
旧版あとがき
文庫版あとがき
見沢知廉「解説 鈴木邦男って狼?!」

1990年〔平成2年〕11月にIPCから刊行された『天皇制の論じ方』*1を加筆・削除・再編集したもの。「文庫版あとがき」によれば旧版「第一章 天皇あやうし=赤報隊の怒り、国民の怒り」「第二章 僕の初めての『天皇体験』=盧泰愚大統領来日と天皇陛下の『お言葉』」「第六章 より民主的、より平和的な憲法を=『君が代』『日の丸』だって悩み、かなしんでいる」を削除し、新たに「第五章 そして、国旗・国歌は法制化されたが……」を書き下ろしたとのこと。
鈴木邦男初心者にはよい本かも。率直に言えば内容に新鮮さを感じないのだけど、それはある私が程度鈴木の著作に親しんでいることと、この10年くらいの言論の変化で鈴木邦男的立ち位置が浸透→拡散→陳腐化してしまったことにあるのだろう。それは同時に鈴木のような素朴で、だからこそ強靭な「言論の力」への信仰が人々の共通了解ではなくなったことを意味するのかもしれない。パフォーマティブな言説が世界を覆う中、コンスタティブな「言論」の殉教者というパフォーマンスを愚直に続ける鈴木邦男はなんだかいつも切ない。