遠藤誠、佐藤友之『オウム真理教と日本の宗教』

遠藤誠、佐藤友之著『オウム真理教と日本の宗教 対談 捜査・報道・宗教を問う』三一書房/三一新書/1996年10月/ISBN:4380960188

オウム事件と日本の宗教―対談 捜査・報道・宗教を問う (三一新書)

オウム事件と日本の宗教―対談 捜査・報道・宗教を問う (三一新書)

第一部 刑事事件としての「オウム真理教事件
I 弁護士と「オウム真理教事件
II 捜査の犯罪性を問う
第二部 宗教事件としての「オウム真理教事件
I 日本人と宗教
II 共生する権力と宗教、腐敗する日本仏教
III 「オウム真理教事件」を通して何が見えてきたか?
オウム真理教事件は何をもたらしたか――「あとがき」に代えて〔佐藤友之〕
オウム真理教事件史・年表

古本屋で確か一年くらい前に買った本。佐藤の書いた巻末「オウム真理教事件は…」によれば対談は1996年5月10日と15日の2回にわけて行われたもの。
対談が行われた頃までのオウム事件の動きを軽く振り返ってみる。前年3月20日に東京・地下鉄サリン事件が起き、22日に教団施設の強制捜査、30日には国松孝次警察庁長官狙撃事件、4月23日に教団科学技術庁長官・村井秀夫刺殺、5月5日に新宿駅青酸ガス事件、16日の麻原彰晃逮捕で上祐史浩を除く教団幹部はほぼ逮捕され、即時的な報道の熱狂はひとまず緩やかに収束してゆく。9月には坂本堤弁護士一家の遺体が発見され、報道も再加熱。10月には麻原の第一回公判が予定されるも公判前日に当時の弁護人・横山昭二が解任され延期に。12月には宗教法人法による「宗教法人オウム真理教」の解散命令が高裁で認められ精算手続きが始まる。上祐が逮捕されのは11月だったか。年が明け1996年1月から破防法団体規制適用のための弁明手続きが始まる。3月にはいわゆる「TBSビデオ問題」を日テレがスクープ。4月にようやく麻原の第一回公判が開かれる(麻原は罪状認否を留保)。軽く振り返るだけでもこんなに。なげー。

遠藤誠は1995年5月に逮捕された、教団顧問弁護士・青山吉伸の弁護人を一時務めた。また麻原に弁護を依頼され断ったこともある。
あの当時毎日熱心に報道を見ていた私にとっては「そうだ、あんなこともあったな」と色々と懐かしい記憶が蘇る。
内容は第一部がオウム真理教に対する遠藤のおおざっぱな評価(邪教)と捜査手法批判・マスコミ報道批判。第二部は「シャカマル主義者」(仏教+マルクス主義)を自称する遠藤によるオウム教団批判と返す刀での既存日本仏教批判。
第一部の捜査批判・メディア批判に異論は特になし。法曹人として当たり前のことを言っているだけ。第二部がおそらくこの本の(他のオウム関連書とは違う)特徴なんだろうけど、内容はグダグダ。まずオウムに関しては教団批判や組織・体質批判はしても教義批判はしない。まあしないというより邪教だからってまとも調べてないし知らないんでしょう。次、原典に忠実でない宗教を邪教と切り捨て、オウムと共に既成仏教宗派も退けるのは一つの見識だろう。が仏典に帰れというばかりで宗教(信仰)と教団(信仰集団)の関係も考察しない。経典も古今問わず著名なものをまだ読むのはいいが、「本来の仏教」が輪廻を肯定するかのようにと言われると(p.144)どう突っ込んでいいか困る。そりゃ原始仏教じゃなくて、小乗以降だろ。釈迦の教えとか気安く言うな。
まあでもこういった変わった人でないと「帝銀事件」平沢貞道の再審請求に最後まで付き合うなんて出来ないんだろうな、とも思う。