中沢新一著『僕の叔父さん 網野善彦集英社/集英社新書/2004年11月/ISBN:4087202690
僕の叔父さん 網野善彦 (集英社新書) 巻末によれば『すばる』2004年5月号〜7月号に連載された「僕の叔父さん――網野善彦の思い出」を大幅に加筆修正したもの。
網野の甥である中沢新一による追憶の書。意地悪く要約すれば『蒙古襲来』*1、『無縁・公界・楽』*2、『異形の王権』*3といった主著のモチーフにいかに中沢自身やその父・中沢厚の影響が濃かったのかを延々と述べている本。ただし中沢の言う程かどうかは別として中沢家との関わりが網野の思想へ確実に影響を及ぼしているのは確かなんだろう。1968年の佐世保エンタープライズ阻止闘争の様子から飛礫の意味を再発見するくだりはどっか他でも読んだ気がするけど身近にいた人間だけあって生き生きと描写されていて面白い。個人的には網野の思想には日本共産党所感派活動家時代の影響が濃厚に漂っている気がするのだけど、これは中沢と出会う前の話だからこの本には当然言及されていないし、それはまあしょうがない。
ところで中沢新一の文章ってのは宗教学者の著作というより文学として読めば美文家だし結構好きなんだけど。中沢の作品を読むたびに毎回ちょっと困惑する。